日曜日

青の路

大分・別府 小倉・博多

あらゆる命と歴史、文化を育む世代を超えて守り続けたい青

Episode22 青い島





本ページの内容は『Discover Japan』2020年11月号でもご覧いただけます。

「宗像大社」は沖ノ島と大島、九州本土にある、海を隔て結ばれた三宮からなる神社。皇室国家の守護神であり、航海や道路の安全、あらゆる道を開く宗像三女神を祀る。国家的な祭祀が行われていた沖ノ島では、8万点に及ぶ神具や銅鏡が国宝に指定される。

 「宗像大社」は沖ノ島と大島、九州本土にある、海を隔て結ばれた三宮からなる神社。皇室国家の守護神であり、航海や道路の安全、あらゆる道を開く宗像三女神を祀る。国家的な祭祀が行われていた沖ノ島では、8万点に及ぶ神具や銅鏡が国宝に指定される。

 宗像大社は、沖ノ島の沖津宮おきつみや田心姫神たごりひめのかみ、大島の中津宮なかつみや湍津姫神たぎつひめのかみ、九州本土の辺津宮へつのみや市杵島姫神いちきしまひめのかみと、宗像三女神を祀る。宗像が面する玄界灘は、沖合に三角波が立つ荒々しい海で、元寇など外敵を退けてきたが、この地を治めていた古代豪族・宗像一族は航海術に長け、荒波を乗りこなしていた。天照大神の神勅で宗像に降り立った宗像三女神が海路の安全を守ることで、大陸との交易が盛んになり、宗像は国際貿易都市として栄華を誇り、宗像三女神への信仰も広がっていった。

 2017年には、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として、「宗像大社」の三宮と「新原しんばる奴山ぬやま古墳群」を中心にした8つの資産が、ユネスコの世界遺産に登録。「神社神道の根元にあるのは、自然への畏怖と、感謝の心です」と宗像大社の権禰宜・長友貞治さん。「神事に使うアカモクやカジメなどの海藻も、海の汚染により、数十年前に比べるとずいぶん少なくなってしまいました。自然の力が回復しなければ、それに宿る神の力も登場され難いとも考えられます。なんとかしなければならないという危機感をもっています」。世界遺産の登録に際しては、スピリチュアル、漂着ゴミで汚染された海の現状を発信し、環境保全を訴えるエコロジー、そしてアニミズム3つのキーワードを軸に説明することで世界に認められる遺産となった。

 宗像大社の境内では、海を汚さず生態系も壊さない「シャボン玉石けん」のハンドソープが採用されている。無添加の石けんは、海や川に流れつくと微生物や魚の栄養源になるという。自然環境に配慮したものづくりの姿勢も、多くの人から支持されている。海を渡って博多織も発展。鎌倉時代に高僧・聖一国師しょういちこくしと宋に渡った博多商人・満田彌三右衛門みつたやざえもんは、織物の技法を持ち帰り、博多織の起源をつくった。

 大分のブランド魚・関あじ関さばにも注目したい。佐賀関が面する豊予海峡の海中には深い海溝があり、瀬戸内海と太平洋の水塊がぶつかり合うなど、潮流が速い場所だ。さらに夏場は、栄養分が豊富な湧昇流が強まり、餌となるプランクトンが増殖。よく食べて太り、よく締まった「関もの」は、食通を唸らせる高級魚として名高い。

「青」をめぐる旅では、命を育み、大陸との交流を結び、恵みをもたらす海に、あらためて畏敬の念を感じるはずだ。海の恩恵を受けながら、たくましく生きてきた人々の歩みに触れて、明日への活力ももらえるだろう。

宗像大社
住所:福岡県宗像市田島2331
Tel:0940-62-1311

Episode23 青を夢見て

「シャボン玉石けん」は1974年より無添加石けんを製造。「健康な体ときれいな水を守る」を理念につくられる石けんは肌に優しく、海に流れた石けんカスは魚の餌にもなる。「青いお空がほしいのね? 飛ばしてごらんシャボン玉」のCMソングでも愛される。

シャボン玉石けん
住所:福岡県北九州市若松区南二島2-23-1
Tel:093-791-4800

Episode24 献上の青

しなやかで丈夫な絹織物で、780余年の歴史を受け継ぐ伝統的工芸品「博多織」。代表的な献上柄は、江戸時代に福岡藩主・黒田長政公が幕府に献上したことがはじまりだ。その色は、古代中国の五行説と結び付け、「智」と呼ばれる紺色など五色あったと伝えられる。

博多織
取材協力:博多織工業組合
住所:福岡県福岡市博多区奈良屋町5-10
Tel:092-409-5162

Episode25 青の誘惑

小石原焼の窯元で生まれた太田潤さんのガラス工房。沖縄で腕を磨き、再生ガラスを手吹きして作品を生み出す。藍色やスカイブルーなど、青の繊細な濃淡は吸い込まれてしまいそうな美しさ。気泡をあえて残して自然な表情を生かす、陶器のような質感を目指している。

太田潤手吹き硝子工房
住所:福岡県朝倉郡東峰村大字小石原899
Tel:0946-74-2780

Episode26 鬼伝説と青


1300年前に山岳宗教・六郷満山が開山した神仏習合の地・国東半島。毎年旧正月に、僧侶が鬼の面をつける伝統行事「修正鬼会しゅじょうおにえ」が行われる。「国東では、鬼は仏の化身として親しまれています」と話すのは岩戸寺の住職・上田大祐さん。境内で青色の鬼守を発見!

岩戸寺
住所:大分県国東市国東町岩戸寺1232
Tel:0978-77-0537

Episode27 青は旨い

太平洋と瀬戸内海を結ぶ豊後水道、「速吸はやすいの瀬戸」で一本釣りし、佐賀関で水揚げする「関あじ・関さば」。潮流が速くアスリートのように締まった魚を、傷めないよう手を触れずに見た目で値をつける「面買つらがい」を採用。さっぱりとした味わいで刺身が絶品。

関あじ・関さば
取材協力:大分県漁業協同組合 佐賀関支店
住所:大分県大分市大字佐賀関2016-4
Tel:097-575-0511

Episode28 青の名作

競秀峰のトンネル「青の洞門」。江戸時代、岩壁の難所を安全に渡れるよう、禅海和尚が30年かけて掘り抜き、いまもノミと鎚の跡が一部残る。この話をもとに、菊池寛は恩讐を超えた人情を描く小説『恩讐の彼方に』を完成させた。

青の洞門
取材協力:耶馬渓風物館
住所:大分県中津市本耶馬渓町曽木2193-1
Tel:0979-52-2002

Blue Column

海の家族『サザエさん』発案の地

国民的人気を誇る漫画『サザエさん』。作者の長谷川町子は、幼少期など数年を福岡で過ごしている。自伝エッセイ『サザエさん うちあけ話』では、百道の海岸を散歩し、サザエやカツオ、ワカメ、フネなど登場人物を海産物に決めたエピソードが描かれている。
また博多駅近くで迷子になったこと、西南学院の向かいに住んでいたことなど、福岡での逸話も多数残している。2012年には、福岡市により、早良区の脇山口交差点からシーサイドももち海浜公園までの約1.6㎞の通りを、ゆかりの地として「サザエさん通り」に制定。さらに2017年には長谷川町子がすぐそばに住んでいた西新商店街に「サザエさん商店街通り」の愛称が付けられ、地元住民やファンに親しまれている。2020年は、生誕100周年の記念イヤー。東京にある長谷川町子美術館には、新たに記念館が新設された。

取材協力:長谷川町子美術館
住所:東京都世田谷区桜新町1-30-6
Tel:03-3701-8766

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